トレードの作法 : 『無常』のなかで『一期一会』の機に投じる技術
最終更新日 2014年6月5日 : 【特許技術】プライスアクションJAPAN by kumahige
ここでは、以前、わたしが、プライスアクションの解説書で記載した
重要なトレードの技術に対する考え方を紹介しておきたいと思います。
海外のトレーダーにはない、
日本的な「無常」という感覚がトレードにどのように役立つかということについて展開しています。
(ニュアンスを損ねないため、本文は、敬体ではなく、記載時の常体にて記載しております。)
トレードの作法 : 『無常』のなかで『一期一会』の機に投じる技術
「相場は生き物」というが、ダイナミックなマーケットの世界は、
実際にあなたが自分でトレードしてはじめて、本当にわかる事が多いのである。
残念ながら、30年トレードしてきて確かにいえることは、
「机上の理論や過去の相場を学ぶだけで、勝てるほど甘くはない」ということである。
私も、システムトレードを数多く構築し、
過去の分析(バックテスト&フォワードテスト)をおこなってきたが、
「バックミラーを見ながら車を運転するようなトレード」で
勝ち続けることは困難であると考えている。
有名な、シンプルで普遍性の高い堅牢なシステムが、
何度もスクラップ同然に機能しなくなるのを長年の間、目にしてきた。
最も有名なところでは、
一世風靡したタートルズのトレンドフォロー・システム(リスク管理・ユニット法を含む)も
時期によっては機能せず破綻している。
発案者のリチャード・デニスは、2回目の破産したというニュースを知らされたことがある。
個人的にシステムトレードは好きではあるが、
「バックミラーを見ながら車を運転するようなトレード」だけでは
簡単に限界が来るのではないかと感じている。
「歴史は繰り返す」ということを大前提としているのがシステムトレードであるが、
本当に歴史は繰り返しているのだろうか?
あなた自身のことを考えてみてほしい。
あなたの人生の歴史の中での出来事と同じことが、
再度、繰り返されたことがあるだろうか?
まわりの出来事がすべて繰り返されたとしても、
少なくともあなた自身の体は、不老不死でない限り、
過去のものとは異なった状態であるはずである。
毎日細胞は入れ替わり、一年後には、あなたの身体の大部分は入れ替わっている。
宇宙の法則として、同じ瞬間は二度とはない。
量子物理学でみる世の中の構成要素である分子や原子は常に動いていて、
すべてが同じ所に留まるという瞬間はない。
過去においても、未来においてもしかりである。
『無常』であるこの世界に、
あなたの人生で起こった出来事や、
社会現象は本当に繰り返しているといえるのだろうか?
欧米の人に比べ、日本人には、
この『無常』や『一期一会』という考え方はなじみやすいといえる。
『今、ここ』という瞬間の舞台に上がった出来事は、
その瞬間でしか体験できないことなのではないだろうか。
まさに、その瞬間は『一期一会』の機会なのである。
考えた人間の固定概念で勝手に部分的に似た事例を同類として、
分類しているだけで、本質的には同じ歴史は繰り返すことは考えられない。
そして、人間の脳は、
「過去にあったよく似た状態を、同じパターンとしてとらえる習性」
がある。
自分のシステムがうまくいかないときに、
ガッカリして自信を喪失するのも、
前のパターンと、現在のパターンは同じ結果が出せて、うまくいくと、
固定概念で思い込んでいるからである。
しかし、常に相場参加者も異なっていれば、
マーケットを先導するマーケットメーカーも異なる。
本当は、前のパターンと、現在のパターンは無関係で、相関性はない。
だが、すべての人の脳は
「似ているものを同じとして、解釈する」
特性があるのだ。
同じになると、決めつけてしまうのだ。
ここに歴史は繰り返すというのは、
人間の頭が生み出した固定概念ではないかと考える理由がある。
完全にメカニカルなシステムトレードを参考にすることは、
賛成できるが、完全に頼りきってはいけない。
トレードとは、日本語では『投機』という。
『投機』とは、ギャンブル的に思われるのか、
日本語であまり良いイメージではない。
しかし、私が考える『投機』というのは禅語であり、
『無常』のなかで『一期一会』の機に投じるという意味合いをもった素敵なことばである。
過去にとらわれすぎては、機を逃してしまう。
システム化したデータを参考にしつつ、
最終的に、長期間トレードで生き残るには、
『今、ここ』の瞬間でマーケットに対峙しなければならない。
そして、
『今、ここ』の瞬間に
考えられる最適な判断を下すことができる技術が必要なのだ。
そういった意味で、トレードをおこなうことは、感覚的に武道やスポーツに近い。
日本的にわかりやすい表現は『道』という言葉が表現としてぴったりあてはまる。
たとえば、自転車に初めて乗れた時のことを思い出してほしい。
自転車に乗るのに、マニュアルを見ているだけで、できる人はいない。
何度も、実際に自転車にまたがって、繰り返し練習しなければ乗れないはずだ。
場合によっては、何度も転んで、ケガをしたりして乗れるようになる。
もしくは、補助輪を付けて段階的に乗れるようになった人も多いはずである。
基本的で最も重要な部分の知識を得たら、
繰り返しトレードをおこなう中で体得できるように実践を積むのが一番の近道であると考えている。
トレードをおこなうときに、
『無常』のなかで『一期一会』の機に投じる
という感覚を忘れないでいたいものだ。